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万人の知恵CHANNEL【第9回】職場はOK!家で衝突! ちょっと許して… 〜正しさと仲良くの選択〜

 

インタビュアー:万代宝書房代表 釣部 人裕氏
ゲスト:アーティスティックコミュニティ代表 工藤 直彦氏
有限会社STUNT JAPAN 代表取締役 スタントコーディネーター・アクション監督 辻井 啓伺氏

収録:2019年8月15日

釣部:こんばんは。万代宝書房「万人の知恵CHANNEL」のお時間になりました。メインゲスト、工藤直彦さんにお越しいただいております。よろしくお願いいたします。

工藤:いつもありがとうございます。

 釣部:今日はゲストに辻井啓伺さんに来ていただいております。よろしくお願いします。

辻井:こんばんは。

釣部:ギャラリーの皆さん、よろしくお願いいたします。(拍手)自己紹介をお願いいたします。

工藤:音楽事務所をやりながら哲学の塾を運営しております工藤でございます。よろしくお願いします。 

釣部:辻井さん、お願いします。

 辻井:はい。スタントチームゴクウの代表、辻井と申します。映画とかのアクションとか、のスタントコーディネーターをやっております。

 釣部:要は表に出ない、切ったり切られたり、落ちたり燃えたり、馬に乗ったりとかいう?大体、何か転ぶことから…。

 辻井:僕は、今はもう、それをやらせる方ですね。だから、燃えるのだったらコイツ、階段落ちるのはコイツというのを集めてくる、それを監督に紹介します。

釣部:「燃えるならコイツ」ってあるのですか?

辻井:あります。

 釣部:「お前、結婚したな?燃えるか?」みたいな?

辻井:そうそう(笑)。やはり燃えるとお金一杯貰えるのですよ。なので、結婚したら「次燃える仕事はお前な?」と(笑)。

 釣部:みんな消火器抱えて待っていると?

辻井:そうです、そうです。

釣部:何秒とかってやっている?

 辻井:それはそうですね。火を吸ってしまうともう肺が焼けてしまうので、大体火着けてから20秒以内ですね。

 釣部:知らない世界ですよね、スタントの世界は。今日はスタントのお話じゃないので、ちょっとお悩みがあるということで。

辻井:悩みというか、最近もう結婚して25年ぐらいになるのかな。その前に8年ぐらい付き合っているので、もう30年以上一緒にいるのですけれど、何か「一番仲の悪い時期なのかな?」と思って。 

釣部:(奥様は)スタントレディー、スタントウーマンの?

 辻井:そうですね、元。

 釣部:後輩になるのですか?

 辻井:そうですね。

釣部:で、一緒にやっていて、独立されて、一緒についてきて、お子さんが生まれて、育児してもらって、今一緒に。

 辻井:はい。仕事も手伝って貰いだしたら、やはり余計にいつも一緒にいるので、色々愚痴もあり(笑)、方向がみんな僕の方に向いてきたような気がするのですよね。

 釣部:どう答えたらいいか(笑)。

工藤:でも僕の方に向いてきたって、いい話ですよね。だって向いてこなくて寂しい人、一杯いるじゃないですか。

 釣部:無関心というか、無視とか。

 工藤:いないように扱われてしまう人って…。噛みついてきてくれるということでしょう?

 辻井:いや、(それが)「必要以上じゃないのかな?」と思って。「そこまで噛みついてくるか!」という…。

 釣部:変な話、感覚的に「いちいち」みたいな感じになってしまうのですか?

 工藤:箸の上げ下げ?

 辻井:多分、今は、僕のやること何でも頭に来ているのだと思うのですよね。それがもう30年じゃないですか。一挙に、「今言っとかなきゃ、この人はもうダメだ!」みたいな部分があるんじゃないですかね?

 釣部:昔はそうでもなかった?

 辻井:そうでもなかったですね。

 釣部:お子さんがいる時は、お子さんの方にも向いていた部分もあるのですか?

 辻井:はい。

 釣部:お子さんが手を離れて。

辻井:まあ、それもあるのかな…(笑)。まあ色々ありますね。

 釣部:でも、別れたいとかじゃなくて、仲良くなりたいと?

 辻井:そうですね。

 釣部:「何でこう来るのだろう?」と。

 辻井:結局、価値観というか、人間って、「この人はこういう人だ」(という認識)が、「良い人だ」と思っていれば、その人の言うことを聞こうとするじゃないですか?

というか、何か先入観として、「この人は良い人だから、(言うことも)良い人だな」というのがあるじゃないですか?

それが何かもう、「信頼関係が多分無くなってきているのかな?」と思うのですよね。だから、「この人、もう何言ってもダメだな…という風な価値観で見られているのかな?」と思う訳ですよ。こっちは、彼女を認めようと思って接しているのですけれど、ことごとく否定されるので、何か…。俺は何を言っていいのか、今はちょっと分からない状態です(笑)。

夫婦喧嘩

工藤:本当に何言ってもダメと思われていたら、口利いてくれないでしょう? 

辻井:そうなりますか?

工藤:関わってくれないだけでしょう。だって、何言ってもダメなんだもん。やいのやいの言ってくるということは、見込みがあるんじゃないですか?

辻井:見込みがあるのですか?(笑)。

 工藤:…と、奥さんが思っているのでしょうね。真実なんて、どちらから見るかによって、角度によって見え方が違うじゃないですか。だから奥様から見えている姿というのが、「言っとかなきゃ!」と思っているということでしょう?

ということは、まだまだ大丈夫じゃないですか?…と思いますよ。本当にダメになったら、家に帰ってこない、職場にも現れない、着信拒否、連絡つかない。そうなるでしょう?

辻井:はあ…。

 工藤:いつも噛みついてくるのでしょう?

辻井:いつもですね。(笑)

釣部:どうなればいいのかというと、噛みつかない人になって欲しいのですか?そこが不満?

辻井:いや、というか…。(笑)噛みつかない人というか、何でそこまで、ちょっと…。

釣部:言える範囲で1個か何か。 

辻井:「ちょっと許して」と思う訳ですよ。 

釣部:「許して」なんですね(笑)。

辻井:「ちょっと許して」というのがあって。

工藤:それ口に出されたらいかがですか?「ちょっと許して」。そうしたら「許せねえ」って言ってくるのですか?

辻井:どうなのですかね…。

釣部:今の「ちょっと許して」って言えたら…。 

工藤:最高ですよね。

釣部:すごくないですか?女性として(会場の女性に声をかける)

〔女性「すごいですね」〕

釣部:「もう、しようがないわね」とか言ってしまう?

〔女性「はい」〕。

釣部:それで何か言い訳されたら、「何言ってるの?あんた」ってやはり噛みつく?

〔女性「そうですね…」〕

工藤:「ちょっと許して」って、最高ですよね。

釣部:「ああ、そうなんだ?」(と傾聴するコミュニケーション方法)に加えて、「ちょっと許して」というのを新しく。

工藤:ああ、そうなんだ。君はそう思ったんだね。なるほどね。そう思ったんだね――(裏声で)ちょっと許して!〔笑声〕

工藤直彦氏と辻井啓伺氏

釣部:新しいバージョンですね。今日のタイトル「ちょっと許して」になりそうですね、このビデオは。〔笑声〕

工藤:新種の発見かもしれないね。

釣部:ですね。倫理指導※1に使えるかもしれません。「ちょっと許して!と言えば、どれだけ夫婦が仲良くなったか?」みたいな。やはり言えないのですか?「ちょっと許して」と。許してということは、ちょっと自分に非があるとは思っているということですか?

辻井:いやまあ、それはね、はい。思っているというか、B型だからなのですかね?頑固なのです。

釣部:何で血液型(笑)。 

辻井:頑固じゃない。頑固というか…。

 工藤:私もBですけれどね。

辻井:一応、(自分は)会社の社長じゃないですか。会社の社長で、やはり(自分の頭の中には、嫁は)事務員という考えもあるし…。

女房からすれば、事務員というよりも女房なのですよね。だから事務員として言われると、多分許せないのですよね、自分のことを。向こうは自分を「旦那」としか思っていないですからね。

いつも家でニコニコしようと思うのですけれど、やはり「ちょっと許して」とは…。(嫁は)後輩なので、ちょっと言えないのですよね。

釣部:強い人間だから、強くなくちゃいけない(という)所あるから、非があるといけないのですかね?何かすごく矛盾を感じて。だって「許して」ということは、「自分に非があると思っている?」ということですよね。

「何で、お前誤解するんだよ!」なら分かるけれど、「許して」ということは、「俺も悪いんだよ」ということですよね?

辻井:まあ…、そうですね。はい。

釣部:でも、悪くなくても「許して」って、すぐ謝る人もいますけれどね、悪くないのに。「ごめん!ごめん!」とか言って。僕なんか下手にすぐ「ごめん!ごめん!」と言うと、「何が「ごめん」よ!悪いと思っていないくせに!」とまた怒られちゃいますから…。

釣部:まあ、どうしたらいいですか…。

工藤:正しさより 愛和※1ということで、仲良くということで。正しさ同士がぶつかるから、ぎくしゃくする訳で、正しさをちょっと置いておいて、向こうも「これが正しい!」こっちも「正しさ」がある訳で。

正しさ同士がぶつかるから、もめる訳じゃない?だから正しいことは大事なのだけれど、別に正しいことをナンバーワンにする必要はなくて。正しいことは大事ですよ。だけど、何があっても正しさが一番ではないでしょう?それよりも、仲良くするということを一番になさった方が良いのじゃないですかね。

釣部:例えば、辻井さんって…、言ってもいいのですよね?ご病気の過去。

辻井:はい。

釣部:昔がん(を罹患)されて、手術されて、それで「現代医学が違う」ということに気が付いて、今、お食事とか色々な化学物質とかに、すごく気を付けて生活されているけれど、奥様は、あまりそこに意識がない。

辻井:それも許せないのですよ。

釣部:ですよね、多分ね。自分が命かけて食事とか研究されて、お勉強されて、自分も実践されて、今じゃ再発もなく健康になっている。じゃあ、「お前もそれ食べてよ」とか、「こういう生活しようよ!」という思いが、出てしまうのですよね。

工藤:まあ「正しい」ですよね。それを一番にするとケンカになりますよね。

辻井:強制はしないのですよ。でも、言い方ってあるじゃないですか。〔笑声〕

例えば「浄水器をつけましょう!」。それで、浄水器も、シャワーとかも、塩素が含まれていて、髪の毛に浴びちゃいけないから、セントラル浄水器が来た訳ですよ、家に。僕としては、女房子供のことを考えて「セントラル浄水いいんじゃないの?」と言ったら、「水にお金かけるってバカじゃない?」と言うのですね。

工藤:でも…、結構コストかかりますからねぇ。〔笑声〕

辻井:まあそうですね。だから「ちょっと許してよ」という…。

工藤:なるほどね。「水にお金かけるのバカじゃない?」と言われた時に、「ああ、君は水にお金をかけるのがバカだと思っているんだね!」と言えばいいんじゃないですか?そうすると、(相手は)「受け入れてもらった」と思えるから、怒りようがないですよね。

「お前はそう言うけどさあ(怒)」みたいなことを言って、「こういうの大事だよねぇ(愚痴っぽく)」と言うから、ずっと難しいのですよね。「ああ、そうなんだ。水にお金をかけるのは、ばかばかしいと思っているんだね」と言えばいいじゃないですか?

多分、今日お帰りになられても、すぐ噛みつかれると思いますので、その瞬間に相手の言葉をそのまま「そうなんだよね」と言ってしまえばいいじゃないですか?

辻井:その辺もね、 倫理指導※2受けた時に言われたのですけれど。だからそういう風に言うのですよ。

「そうだよな。じゃ、そういうことでいいよ」

「あっ、「そういうことでいいよ」と言ったらダメだな(笑)」。

「まあ、そうだよなあ」と言って、そういうことを言われてというのが、まずあるじゃないですか。で、向こうが何かまた違うことをすると、こっちが(逆に)言ってしまうのですよね(笑)。

工藤:ああ、なるほど。

辻井:「お前さっき、こう言ってたよな?」という風に、ブチっとキレてしまうのですよね。だから、キレるタイミングが違うから、向こうは何でキレているか分からないのですよ。こっちは前に(言っていた)ことにキレているのですよね。でも向こうは、「今キレること?それ」と、こう…。

釣部:それって部下とか、他のスタントマンとの関係では起きない?奥さんとだけ?

辻井:それは何というか、昔の古い世界で…。僕らってやはり、「一番上が白といえば白」みたいな育ち方をしているので、あまり…。根に持っているかも分からないですけれども。最近、それがだんだんオープンにはなってきたなとは思うのですけれど。

釣部:じゃあ「こうしろ!」と言ったら、若いのは「はい!」と?

辻井:僕はそういうのが嫌いだったので、本当に「そうしろ!」とは言わないのですよ。僕はそうは言わないのですけれど、命に係わることで、「それはお前、やっちゃダメだろう」というのは言いますけれど、あまり強制しているつもりはないですよね。

釣部:じゃ、スタントのコーディネートする時は、「こういうのどう?」という提案(をして)、例えば殺陣で言うと、「こうやって、こうやって(手振りしながら)、切ったらどう?」と言って、スタントマンが「いや、監督、こっちがいいんじゃないですか?」と言ったら、「そうか。じゃ、やってみようか」みたいな感じで?

殺陣のふりをする釣部人裕

辻井:スタントなんかも、逆に「何やるの?」と。「お前なら何が出来るの?」と。じゃ、それやるのだったら、「こう撮るよ!」という風なことには、しようとしているのですけれどね。

「これやれ!」と言って…。自分は、やはり、元々プレーヤーなので、出来ないことをやらされていると思うと、怪我する訳ですよね。「やりたい」と思ってやらないと。楽しんでやらないと。だから自分が「やりたい」と思わないと、やはりちょっと危ないので。

釣部:2階ぐらいから飛び降りるのですよね、スタントマン。普通怪我しますけれど、「ここ飛び降りた方がいいと思うんですよね」みたいなことを言うスタッフが出てきて、「じゃ、降りてみるか?」と言ってやらせる。そういう風に作っている感じだけど、奥さんだけは「うるせえ、このやろう」って…。

辻井:なってしまうのですね。

釣部:やはり許してもらうしかないですね。

家族経営なら使い分け必須!
共同体組織と機能体組織の違いとは?

工藤:ちょっと理屈を言うね。倫理(法人会)的なことから離れて理屈のことを言うと、組織論の話なのだけれど、組織って共同体組織機能体組織があるのですよ。

機能体組織というのは、目的遂行のためには、個人のハピネスは後回しにする組織です。例えば軍隊が最たるものでね。「お前、ミッション成功のために死んでこい!」なんて、あり得ないことがあり得るのが軍隊じゃないですか。例えば消防とか警察もそうですよね。ミッション遂行のためには。スタントの世界も多分そうなのですよ。私の芸能の仕事も、もちろんそうですよね。

だけど、奥さんって家族じゃないですか。家族って共同体組織のメンバーなのですよ。共同体組織というのは、ミッション遂行が第一義じゃなくて、ハピネスが第一義なのですよ。

だから、今この瞬間、この場は「共同体組織」なのか、「機能体組織」なのかというのをロジックで考えて、その場の立ち居振る舞いを変えないと、辻井家で起きているようなことが起こる訳ですよ。

だから奥さんと夫婦という認識の中で、もちろん仕事の話も入ってしまうのだけど、その時は相手が「共同体」だと思って話をしてくるのですよ。それに対してこちらが「機能体」マネジメントをするとずれるのですよ。

例えば「俳句を読む会」というのがあったとしてね。これは趣味の会だから、楽しみにきている訳じゃない?全員。だから、これは間違いなく「共同体組織」なんですよ。ハピネスが大事なのですよ。目的遂行というのは二の次なのですよ。

そこで、たまたま、マネジメントの仕方、共同体組織のマネジメントの仕方を知らないリーダーが俳句の会の会長さんになって、こういうことをやってしまう訳ですよ。「何々さん、いいですか?来月のこの会までに10句作ってくるのですよ?いいですか?皆さんの前で宣言してください!」とか言ってしまう訳ね。

これ「機能体型マネジメント」ね。多分、翌月人来ないですよ。〔笑声〕だから例えば、部活経験とかある人は分かると思うのだけど、体育会、部活なんかであれば、特に強豪校…私、高校仙台育英ですからね。そういった所の部員たちというのは、機能体でいいのですよ。

本当はいけないのだけれども、時々暴力事件みたいなのが起きてしまうのも、機能体マネジメントの中で手を出してしまうことがある訳ですよね。でも、殴られた後輩だって、「まあしようがないかな」と思っている所があって。機能体だから。

スタントの世界も多分そうだと思うのね。先輩から、社長から、ちょっと厳し目に言われても、「それはそうだよな」と思って、別に「ブラック(企業)だ」なんて言わないじゃない?だけど、それを家庭に持っていったら、「何よ!あんた!」ということになるでしょう?

だから、この瞬間、今、機能体なのか、共同体なのかをちゃんとわきまえて、立ち居振る舞いを変えるということが大事なのですよ。

例えば会社の忘年会ね。忘年会の瞬間というのは、間違いなく共同体になっているのですよ。でもそこで、例えば支店長なんかが、「おい、〇〇、来い」とか言って、「お前な、前々から言おうと思っていたんだけどな?お前、何だあれは…」とか。その瞬間共同体なのに機能体を持ち込むと、嫌なやつになる訳ですよ。

でも仕事場になった時に、「いや、昨日飲み会、楽しかったね。あの話の続きなんだけどさ…」とか言ったら、これ機能体組織に共同体持ち込んでいるじゃないですか。リーダーとして失格ですよね。

だから、家族といる時は共同体ということをよく理解して、仕事場の時は機能体ということ。オンとオフをはっきり分ける。特に倫理法人会の会員企業って家内制手工業が多いじゃないですか。 三ちゃん会社※3が多いじゃないですか。ほとんど家族で経営していて、旦那が社長で、息子が専務で、奥さんが会計全部やっているなんてすごく多いですよね。

それで、職場に行っても「お父さん」とか「ママ」とか呼んでいる会社って、ダメなんですよ。やっている会社が多いけれど、職場では「社長、専務」。たとえ自分の息子であれ、名前で呼んだりしないで、「専務」って呼ばなきゃいけないのね。でも、家に帰っても奥さんが旦那のことを「社長」と言ったら、違和感満載でしょう?

だから、その場その場で、同じ顔ぶれであっても、機能体組織と共同体組織というのはマネジメントを変えるのですよ。それが論理的に出来れば、結構テクニックで解決出来てしまうこと、今の話は。別に 純粋倫理※4の話を出さなくてもいいのね。

奥さんと2人でいる時、奥さんのしゃべり方で、「あ、機能体で来たな!」「共同体で来たな!」と分かるじゃない?特に男なんて、「思い」でお金を使ってしまう所あるじゃない?「夢」でお金を使ってしまう所がある。だからお金を管理している奥さんからすると、「何よ!あんた!」みたいな所があるのね。

その時に、会社のお金の話で来た瞬間、それは絶対機能体なのですよ。だから経理担当の人間から経営者に対して、金銭の使い方について具申があったと捉えなきゃいけない。それを「うちの嫁は何もわかっていない!(怒)」となると、これは間違いなのですよ。

こうやって「切り替える」ということを意識なさる。相手の声のトーンで分かるからね、「機能体で来たな」、「共同体で来たな」というのは分かるので、それに合わせればいいのですよ。特に家族経営の場合はこれが出来ないと、本当に難しい。赤の他人さんばかり集まっている大きな会社なんかだと、割とこの辺は棲み分け出来るけれど、それでも飲み会の時に、機能体で飲み会をやるバカな上司が結構いるからね。間違いですよね。

釣部:どうですか?機能体、共同体。

辻井:うちの社員もやはり長いので…。みんなもう20年とか付き合いがあるので、ちょっと今のヒント…、「機能体と共同体の違い」というのは、今ちょっと混同しているのはあるなと…。

工藤:慣れるまで宣言しちゃえばいいのですよ。みんなに「機能体と共同体」のことをよく説明した上で、「ちょっとみんな集まって!ここからは機能体の切り口でお話しさせてもらうよ」と言うと、相手のスイッチがカチャッと入るじゃない?それで、「お疲れさまでした!ここからは、共同体でいくからね!」と。これを世間では一言で「無礼講」というのですね。無礼講で本当に無礼になるやつもいるけれども。〔笑声〕

大爆笑する3人

まあでも、無礼講というのは、つまり共同体宣言なのですよ。「ここからは共同体だよ」と。だから「仲良くすることが大事。全員のハピネスが大事」なのだよ。でも機能体の時は「目的遂行が第一義」なのですよ。「個人の幸せは、ちょっと後回し」という。

だからこれを宣言してしまえばいいのですよ。それはリーダーがやっていいことですよね。逆に部下から言うと変ですもんね。「社長、ここからは共同体でお願いします」とか言うと、「お前、まだ仕事終わってねえだろう?」という感じになるじゃないですか。一度説明なさったらどうでしょうか? 今の話で分かるでしょう?意義が。

辻井:はい。

 工藤:「ここからは機能体だよ、ここからは共同体だよ」というのをちょくちょく使うようにすると。奥さんもオン・オフは、はっきりする。

釣部:よく企業で「3人、5人のうちは家族でいい。9人、10人になると、企業としての立場にならなくてはいけない」と。そこがなかなかね。30人になってしまうと変われるのだけど、7、8、9人辺りは家族経営的でも何とか経営出来てしまう。

スタントってやはり命を張っているじゃないですか、皆さん。だから共同体的な要素もないと、「 阿吽(あうん)」で分かって、お互いに本当に命を預け合うじゃないですか。だからロープワークとか、本当に引くタイミングとかで変わって…。

引く人に「飛ぶのは簡単だ!」と言われたのですよ。「あんなのバランスだけ!あれば簡単だ!」と。引くやつがタイミングを間違ったら全部終わりだから、引くやつの方が上なんだという話を聞いて、「へえ…」と。

僕らは、知らないから、スターで飛んでいるやつが格好いいと思うけれど、実は引くやつのレールの引き方(ワイヤーアクション)、カメラに映らないようにどうレールを引いて…。

だから「そいつらがチームなんだよ」という話を聞いて、それで本当に失敗したらお金にもならないし、下手したら怪我、命に関わるという中でやっているから、その辺が多分、混同されていたのが、ヒントになったのでしょう。

あと僕、いいなと思ったのは、やはり「許して」なんですけれど、僕も言えなかったのですよ、「許して」って。僕は冤罪事件について20年やっていて、ちょっと批判ももらったことがあるのですよ。その時に、反発していたのですよ。

でもある時、「もう許して…」と言ったのです。「俺20年、こんなに頑張ったんだけど、許してよ。やめないよ。頑張るよ。でも、もう言わないで、許して…」と、泣いたというより涙がすっと出たのですよ。そうしたらそれ以上、みんな言わなくなったのですよ。

でも、「許して」という言葉は(それまで)言えなかったのですよ、自分の中で。だから、この「ちょっと許して」というのは、頑張っていたからこそ言えないセリフ。何か「負け」に聞こえてしまうというか、自分で「負けを認めた」ように僕は思ったので。再審とか国家権力と戦う訳だから。「許して、でも戦うよ」と、そこが20年言えなかったですね。

10年ぐらいは言う必要もないのだろうけれど。だから最後の言えなかった3年、4年は、本当に苦しかったですね。一回「許して」と言ってしまうと。「だから、やめる訳はないよ。やるよ。」で、もう一回エンジンかかったみたいな気持ちになったので。何を「許して」なのかは、(辻井家の)ご家庭の事情があると思うので、お考えいただいて…。

辻井:ありがとうございます。(笑)。

釣部:「ああ、そうなんだ」「ちょっと許して」と、今日は、何かすごく良いですよね、これ。

おいしいですよね?(会場男性スタッフに問いかける)

〔スタッフ「おいしいです」〕。

では、この後、懇親会でその話を深められればと思います。今日はどうもありがとうございました。皆さん、ありがとうございました。

工藤:ありがとうございました。

【用語解説】

※1 愛和とは、倫理運動創始者の丸山敏雄の造語である。「愛和」とは「なかよく」ということにほかならない。愛によって和(和合、調和)が生まれ、人間関係や物事が順調に進んでいく。愛の本質は「むすびつける」こと。その、むすぶ力が場にみなぎり、すべての人(物)が本来あるべき在り方にある状態が和(調和)なのである。

※2 倫理指導とは、倫理法人会で倫理指導資格のある役員が、会員の抱える問題点をつぶさに聞き、生活法則である純粋倫理から外れている部分を見抜き、正しい道筋を指摘します。苦難を足場にして、その人生観、人間性を変革し、正しい方向に生活を改善することを目的とします。工藤直彦法人スーパーバイザーは倫理指導を数多く担当しています。

※3 三ちゃん企業とは、三ちゃん農業(じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃん)という言葉を家族経営企業向けにアレンジした言葉。(とうちゃん、かあちゃん、ばあちゃん若しくは、にいちゃん)

※4 純粋倫理=守れば幸福になる厳然とした日常の法則、生活の法則(すじみち/くらしみち)。

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