◆『食物』と『食品』は同じもの?
先日、本物の醤油を頂いた。すご〜く、美味かった。子どもの頃の醤油の味をを思い出した。
最近、冷凍技術や加工技術が発達し、世の中にはさまざまな食品が溢れている。
日本人に欠かせない調味料といえば、やはり味噌、醤油である。しかし、最近の味噌、醤油は、すでに造り方が違っている。
『アミノ酸しょう油は脱脂大豆、魚カス、毛髪、屠殺場のあまり物などを主原料にしてつくられます。こうした材料を塩酸で煮て(これを加水分解という)、中和させるとアミノ酸液となります。これにグルタミン酸ナトリウム、白砂糖、サッカリン、氷酢酸、コハク酸、カラメルなどを加えると一見して、しょう油風の液体ができあがる。しかしこれだけでは香りがないから、天然醸造の本物のしょう油を混ぜ合わせる。こうしてできたものが、スーパーや食料品店で売られているしょう油の正体です。』
――恐るべき食品汚染 ―― 武者宗一郎著 より
元来、丸大豆に小麦、そして自然塩を使い、それを二夏越すまで常温で熟成させるのが天然醸造であり、これが本当の醤油である。一方、最近市場に出回っている醤油は、脱脂大豆や外国産の小麦、そして塩化ナトリウムとしか呼べない塩を使い、3~6ケ月という短期間で醸造して出荷している。これらの味噌、醤油は私たちの祖先が日本の風土の中で、経験と知恵をかたむけながら、長い年月をかけて作り上げてきたものである。
私たちが健康に生きるためのこの貴重な食べ物を企業の都合で「食商品」にして良いものでしょうか。
どうやら、「食べ物」と「食品」の違いも、この辺にありそうである。
食べ物とは自然の恵みそのままのものと、長い経験と知恵と風土からできた食物で、食品とはその自然のプロセスに手を加えて、人間の都合や効率に合わせてつくり出された「食商品」なのかもしれない。
食品は、「食べられるもの」ではあるが、「食べるべきもの」ではないのかもしれない、そんな皮肉の一つも言いたくなる違いがありそうである。
そういえば、「食品添加物」とはいうが、「食物添加物」とはいわない。
先人が打ち立てた食養の考え方から言うと、食ベ物を食品と言い換えることにすでに何かごまかしがあるような気がしてならないのである。
これでは、とても食が人を養ってくれないどころか、食べれば食べるほど不健康になってしまう疑いをもたれても仕方がない。
こうした食べ物の商品化への危機感もあって、最近多くの人が有機農産物や無農薬野菜に無意識にのうちに熱い視線を注ぐようになったのであろう。